日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者多発性骨髄腫における骨病変の臨床的検討
梅田 正法足立 山夫富山 順治高崎 優新 弘一森 眞由美堤 久村井 善郎武藤 良知友安 茂川戸 正文中村 典子妻鳥 昌平山口 潜
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2002 年 39 巻 6 号 p. 631-638

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抄録

高齢者多発性骨髄腫 (MM) の骨病変の発現率および経過について, また, 骨病変と臨床的検査パラメータおよび予後因子との関係について検討した. 対象は1988年より1997年までの間に老年者造血器疾患研究会の11施設に入院した65歳以上の患者146例で, 年齢は65歳より97歳で, 中央値は74歳で, 男女比では男64例, 女82例, 病型ではIgG型88例, IgA型37例, Bence-Jones (BJ) 型17例, IgD型3例, 非分泌型1例であった. 65例の非高齢者MM患者 (NE-MM群) を対照とし, 比較した. MM診断時に骨病変があるもの104例, 骨痛があるもの75例であり, 骨病変の種類では溶骨性病変のみが26例, 溶骨性病変+骨粗鬆症が23例, 骨粗鬆症が2例, 病的骨折のある症例が53例であり, 非高齢者MMに比して溶骨性病変+骨粗鬆症の症例の頻度が多かった. 骨病変を病的骨折を考慮せずに溶骨性病変+骨粗鬆症, 溶骨性病変, 骨粗鬆症の3型に分けると溶骨性病変+骨粗鬆症が66例, 溶骨性病変が33例, 骨粗鬆症が5例, 非高齢者は溶骨性病変+骨粗鬆症が15例, 溶骨性病変が37例, 骨粗鬆症が1例で, 高齢者では骨粗鬆症を合併した症例が有意に多かった (p<0.0001). 初診時の骨病変の部位は腰椎 (骨病変を有する症例中58.7%), 頭蓋骨 (56.7%), 胸椎 (40.4%), 肋骨 (27.9%) が多く, 非高齢者では頭蓋骨 (64.2%), 胸椎 (28.3%), 腰椎 (22.6%) が頻度が多く, 腰椎の骨病変は非高齢者よりも有意に高率であった (p<0.0001). また, 全経過中で骨痛により運動制限を受けたものは146例中71例 (48.6%) であった. 予後因子と骨病変の関係では入院時の骨髄中の形質細胞%は骨病変の有無により差があり, 血清Ca値, 骨髄中の形質細胞%および血清β2-microglobulin 値は骨痛および病的骨折の有無により有意差があった. 生存期間は非高齢者MMでは骨病変の有無, 骨痛の有無, 病的骨折の有無でそれぞれp<0.05で有意差が有りそれぞれ骨病変の有る症例, 骨痛の有る症例および病的骨折のある症例で短かったが, 高齢者MMでは骨病変の有無, 骨痛の有無, 病的骨折の有無においてすべてに有意差を見なかった. 以上より, 高齢者MMと非高齢者MMの骨病変の間に2・3の相違が見られた.

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