臨床血液
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症例報告
多発性骨髄腫に対するlenalidomide投与中に発症した後天性血友病A
佐分利 益穂大塚 英一井谷 和人長松 顕太郎池邉 太一宮崎 泰彦緒方 正男佐分利 能生
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2015 年 56 巻 5 号 p. 496-500

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抄録

症例は67歳,女性。2009年に貧血,骨病変を認め,症候性多発性骨髄腫IgA-λと診断。Bortezomib, dexamethasone (DEX)療法後に再発し,2012年にlenalidomide (Len), DEX, cyclophosphamide (CPA)で治療を行った。10日目に血清クレアチニンが上昇し,Lenを休薬したが,APTTが治療開始前の33.7秒から89.5秒に延長していた。Mixing testでinhibitor patternを示し,第VIII因子活性2%, 第VIII因子inhibitor 4.85 BU/mlであり後天性血友病Aと診断。Prednisolone (PSL)を投与し,inhibitor 1.09 BU/mlまで低下した。Lenの休薬で血清クレアチニンは改善し,Lenの投与を再開したが,inhibitorが再上昇した。Lenを中止し,PSL増量,CPA併用でinhibitorは4ヵ月後に消失した。Len開始と共にinhibitorが出現し,再投与でinhibitorが上昇した経過からLenによる薬剤性後天性血友病Aを疑った。後天性血友病Aは重篤な出血を来す自己免疫疾患であり,これまでLen投与と関連が疑われた報告例はなく,稀ながら注意をすべき病態であると考えられる。

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© 2015 一般社団法人 日本血液学会
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