日本薬理学雑誌
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Nafamostat mesilateと各種セリン蛋白分解酵素阻害剤のIn vitroにおける作用の比較研究
猪 好孝鈴木 邦彦佐藤 拓夫岩城 正廣
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1986 年 88 巻 6 号 p. 449-455

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抄録

nafamostat mesilate(nafamostat)の各種セリン蛋白分解酵素に対する阻害作用をin vitroにおいてgabexate mesilate(gabexate),leupeptin,aprotininおよびurinastatinと比較検討した.nafamostatは,トリプシン,プラスミン,スロンビン,膵カリクレイン,Clr-およびCls-を強力に阻害し,その作用はgabexateおよびleupeptinより強かった.なお,gabexateは膵カリクレインを,leupeptinはスロンピンを阻害しなかった.一方,aprotininはトリプシン,プラスミン,膵カリクレインおよびキモトリプシンに対して,またurinastatinはトリプシンおよびキモトリプシンに対して阻害作用を示した.希釈血清中での古典経路を介する補体溶血に対するnafamostatの阻害作用は,gabexateおよびleupeptinよりも強く,aprotininおよびurinastatinでは阻害作用を示さなかった.さらにnafamostatは,非希釈血清中での古典経路を介する補体溶血に対しても阻害作用を示したが,gabexateは阻害作用を示さなかった.aprotininやurinastatinと異なり,nafamostatおよびgabexateは,トリプシン単独ばかりでなく,α2-マクログロブリンと結合したトリプシンに対しても同程度の阻害作用を示した.nafamostatおよびgabexateを予め血漿とインキュベートすると,nafamostatと比較してgabexateでは,時間経過と共に,より著明なトリプシン阻害作用の低下が認められ,血漿中の安定性に関しても,gabexateよりnafamostatの方が優れていた.これらの結果から,nafamostatは従来の種々セリン蛋白分解酵素阻害剤よりも広域な阻害スペクトラムを有し,かつ優れた作用を有することが明らかになった.

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