日本薬理学雑誌
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ラットの実験的関節炎疼痛に対するヒアルロン酸ナトリウムの効果
相原 静彦村上 尚史石井 律子仮家 公夫東 陽子濱田 くみ子梅本 準治前田 誠二
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1992 年 100 巻 4 号 p. 359-365

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抄録

ラットの膝関節内に尿酸ナトリウムの針状結晶(MSU)を注入すると関節炎に伴う疼痛のため歩行異常がみられ,同時に関節液中のブラジキニン(BK)およびプロスタグランジンE2(PGE2)濃度の上昇がみられた.そこで,ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)溶液をMSU注入の1時間前に膝関節内投与し,この歩行状態改善を指標にNa-HAの鎮痛効果を調べるとともに関節液中のBKおよびPGE2濃度の上昇に対するNa-HAの影響を検討した.MSUを注入すると歩行異常スコアは上昇するが,分子量4.7×105(HA-47),9.5×105(HA-95)および2.02×106(HA-200)の1.0%Na-HA溶液を膝関節内に前投与すると分子量の大きさに従って歩行異常の改善が認められ,特に,HA-200投与群のみがMSU注入4および6時間後において有意な作用が認められた.また,0.1,0.3および1.0%のHA-200溶液を前投与すると,濃度依存的な歩行異常改善作用が認められ,1.0% HA-200溶液投与群では有意な鎮痛効果が認められた.MSUを関節内に注入すると関節液中のBKおよびPGE2濃度は上昇し,注入4時間後に最大値を示した.分子量の異なる1.0% Na-HA溶液を前投与するとBK濃度の上昇はHA-95およびHA-200において分子量の大きさに従って抑制され,特に,HA-200投与群では対照群に比べ有意に抑制された.また,PGE2濃度の上昇はHA-47,HA-95およびHA-200のいずれの投与群においても対照群に比べ有意に抑制された.以上の結果から,Na-HA前投与はMSUの関節内注入による関節炎疼痛に対して鎮痛効果を示し,特に,HA-200は有意で最も強い効果を示すことが明らかとなった.また,この鎮痛効果には関節内におけるBKおよびPGE2の産生に対するNa-HAの抑制作用が関与していると推察される.

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