順天堂医学
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原著
脳梗塞患者における経食道心エコー図の有用性
--心血管系における塞栓源の検討--
小島 諭佐々木 玲聡小島 貴彦星 誠一郎峰田 自章太田 洋戸叶 隆司諏訪 哲中田 八洲郎
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2001 年 47 巻 1 号 p. 82-90

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抄録

目的: 脳梗塞患者の15-35%は心原性塞栓によるとも言われているが, 近年, 新たに大動脈粥状硬化性病変の関与が指摘されつつある, そこで, 今回, 脳梗塞患者に経食道心エコー図を施行し, 心血管系に関連する塞栓源の危険因子について検討した. 対象: 1997年6月-2000年12月までに症候性脳梗塞と診断され, 経食道心エコー図を施行した連続144例 (男性94例・女性50例, 年齢は27-87歳で, 平均年齢67.1±10.5歳) を対象とした. 心房細動の有無の内訳では, 慢性心房細動71例・発作性心房細動18例・洞調律55例であった. 方法: 経食道心エコー図を用いて, 塞栓の危険因子である, (1) 心内塞栓子 (血栓・疵贅・粘液腫など), (2) 中等度以上の左房内モヤモヤエコー, (3) 左心耳血流速度低下 (20cm/sec未満), (4) 上行から弓部にかけての大動脈複雑プラークの4項目について検討した. 結果: 経食道心エコー図では, 144例中104例 (72.2%) で何らかの危険因子を有していた. その内訳は, 心内塞栓子57例 (39.6%) ・左房内モヤモヤエコー53例 (36.8%) ・大動脈複雑プラーク52例 (36.1%) ・左心耳血流速度低下33例 (22, 9%) であった. また, 年齢と共に危険因子の合併率は, 増加する傾向にあり, かつ合併する危険因子数も多くなった. 心調律別では, 慢性および発作性心房細動例は洞調律例に比して有意に合併率が高かった (それぞれp<0.0001・p<0.05). また, 慢性例では発作性に比し, 複数の危険因子合併例が有意に多かった (p<0.001). 結論: 脳梗塞患者では経食道心エコー図で, 約7割に塞栓危険因子 (心内塞栓子・中等度以上の左房内モヤモヤエコー・左心耳血流速度低下・大動脈複雑プラーク) を認めた. 以上より, 経食道心エコー図検査は心血管系における塞栓源の検索に有用であると考えられた.

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© 2001 順天堂医学会
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