日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
局所発汗量連続記録装置を用いた発汗の定量的評価(第2報)―多汗症と無(乏)汗症を用いた検討―
神野 公孝吉池 高志
著者情報
ジャーナル 認証あり

1989 年 99 巻 11 号 p. 1153-

詳細
抄録

多汗症と無(乏)汗症の症例それぞれ6例と4例について報告した.多汗症6例はすべて掌蹠限局性多汗症であり,いずれも局所多汗以外は健常であった.無(乏)汗症は4例経験し,それぞれGuillain-Barre症候群,先天性無痛無汗症,無汗性外胚葉形成不全,特発全身性無汗症が原因と思われた.このような症例における発汗を客観的に評価する目的で,新しく開発された局所発汗量連続記録装置を用いて,発汗量の定量を試みた.発汗誘発刺激として,(1)深呼吸,(2)対側手握り,(3)対側手温・冷,(4)暗算を用い,センサー装着後の基線安定時間をもう一つの測定変数とした.いずれの測定によっても多汗症,正常,無(乏)汗症の順に発汗量が大きかったのは当然のことである.その他にいくつかの興味ある知見を得た.即ち,(1)無汗症においてはいかなる刺激を与えても発汗は誘発されなかった.(2)多汗症においては,全ての刺激が正常より大きな発汗を誘発し得たが,特にその差は精神的刺激である暗算刺激によって最も大きかった(正常:0.18±0.04ml/min,多汗症:0.52±0.07ml/min,p<0.001).以上より,(1)局所発汗量定量が多汗,無(乏)汗症の診断のみならずその程度の判定に客観的評価を与えること,(2)掌蹠限局性多汗症では精神的刺激が最も発汗を誘発したこと,(3)発汗量測定には暗算または握り刺激発汗,基線安定時間が信頼に足る変数として有用である点,などが明らかにされた.また,従来,掌蹠限局性多汗症の原因は精神的・心理的要因によるものと理解されていたが,純然たる精神刺激による発汗が,他の自律神経刺激による発汗より有意に上昇していることで,われわれはこのことを立証することができた.

著者関連情報
© 1989 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top