産業衛生学雑誌
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異なった濃度のMEK混合暴露が血清,坐骨神経,尿中2,5-ヘキサンジオン濃度に及ぼす影響
安井 隆人趙 文元三角 順一青木 一雄島岡 章工藤 政信
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1995 年 37 巻 1 号 p. 19-24,A3

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抄録

産業現場でよく用いられるn-hexaneの代謝物で,神経障害を起こすといわれている2,5-hexanedione (2,5-HD)の体内動態が,混合投与によりその神経毒性を増強するといわれているMethyl ethyl ketone (MEK)の濃度変化により,いかなる影響をうけるかを明らかにした.ラット108匹を3群に分け経皮的に2,5-HD (2.6 mmol/kg)単独投与群と2,5-HD (2.6 mmol/kg)+MEK (2.6 mmol/kg)混合投与群と2,5-HD (2.6 mmol/kg)+5倍のMEK (13.0 mmol/kg)混合投与群を作り, 0.5, 1, 2, 4, 8, 16時間後に血清中,坐骨神経中,尿中(16時間後のみ) 2,5-HD濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した. 2,5-HDの血清中濃度及び神経中濃度は,単独投与に比べて混合投与群では全体的に高く,またクリアランスも遅く,この傾向はMEKの濃度が高いほど明らかだった.また, 2,5-HDの血清中濃度は,単独投与群では片対数グラフで2相性を示し,それぞれの生物学的半減期は投与後1から8時間では6.5時間であり, 8から16時間では1.2時間であった.一方5倍のMEK混合投与群の半減期は, 8から16時間では16.6時間であり,これは2,5-HD単独投与群の8-16時間における半減期の13倍と非常に遅くなっていた.次に神経組織におけるクリアランスについて,投与後2-8時間におけるクリアランスは,血清中クリアランスより遅くなる傾向があり,生物学的半減期は,単独投与群では5.2時間であり, 2,5-HDと当モルのMEK混合投与群では9.6時間, 5倍のMEK混合投与群では19.9時間であった. 2,5-HDの血清中濃度と神経組織中濃度の比は, 4.8から6.6と2,5-HDの単独投与,あるいは混合投与にかかわらずほぼ同じ程度であり,神経中濃度は血清中濃度をよく反映していた.投与から16時間までの尿中排泄量は,投与量の約1.5%から3.1%であり, 2,5-HD単独投与群より混合投与群の方が多く,この傾向はMEKの血中濃度が高いほど著明であった.また,血清中濃度及び神経中濃度と尿中濃度の相関係数は,ともに約0.8とよい相関がみられた.

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