分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
マイクロシリンジ試料導入法を用いたDirect Analysis in Real Time (DART)-TOF-MSによるα-PVP含有危険ドラッグ分析における定量法の検討
杉江 謙一阿久津 守斉藤 貢一
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2016 年 65 巻 8 号 p. 439-446

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抄録

近年,社会問題となっている危険ドラッグの乱用に対処するため,含有される薬物の迅速な鑑定が要求されている.そこで,大気圧下において試料を直接イオン源に注入することで,迅速な質量分析が可能であるDART-TOF-MSを用いた定量分析法について検討した.しかし,Direct Analysis in Real Time(DART)-飛行時間型質量分析法(TOF-MS)は従来の試料導入法では測定値の再現性が悪く,定量分析に適していない.そこで,本研究ではマイクロシリンジ注入法を採用し,モデル化合物としてα-pyrrolidinovalerophenone(α-PVP)を,また内部標準物質としてα-pyrrolidinobutiophenone(α-PBP)を用いて定量精度の高い測定法の構築を試みた.その結果,検出限界は0.03 μg mL−1,定量下限は0.1 μg mL−1となり,検量線は0.1~50 μg mL−1の範囲で相関係数0.999と良好な直線性が得られた.また,定量性の指標とした真度は±4% 以内,併行精度及び室内再現精度は共に9% 未満と良好であった.構築した分析法及び従来のガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法を用いて,液体危険ドラッグ中α-PVPの定量分析を行い,測定値を比較したところ,両者は同程度の値を示した.これらの結果から,本法により液体危険ドラッグ中α-PVPを簡便・迅速且つ高精度で定量分析することが可能であることが示唆された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2016
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