日本臨床免疫学会会誌
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総説
Srcチロシンキナーゼファミリーと急性肺障害
奥谷 大介
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2006 年 29 巻 5 号 p. 334-341

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抄録

  急性炎症反応は様々な疾患における組織や臓器障害の根底にある重要なメカニズムである.敗血症・広範囲熱傷・侵襲の大きな手術・外傷・誤飲などの原因により引き起こされる急性肺障害では,炎症細胞・肺胞上皮細胞・血管内皮細胞より産生される炎症性メディエーター(TNF-α, IL-1s, IL-6など)が重要な役割を担っているが,これは細胞内の様々なタンパクより形成されるシグナルにより調節されている.Srcチロシンキナーゼファミリーは,急性炎症反応に関与する細胞内シグナル伝達タンパクとして重要であり,そのリン酸化は炎症性メディエーターの発現や産生の程度を決定する大きな要素のひとつである.これまでの動物実験により,Srcチロシンキナーゼインヒビターが急性肺障害などの急性炎症反応に対して,予防的に作用することが証明された.また,細胞分子レベルにおいても,Srcチロシンキナーゼは炎症細胞の活性化や血管内皮細胞の透過性亢進に関与しており,そのインヒビターが炎症細胞の活性化や血管透過性亢進を抑制することが確認されている.本稿では,急性肺障害におけるSrcチロシンキナーゼの役割の理解やそのインヒビターの効果について述べる.

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© 2006 日本臨床免疫学会
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