日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
原著
ニューモシスチス肺炎の予防基準の有用性に関する検討
箕輪 健太郎名切 裕李 鐘碩天野 浩文森本 真司田村 直人戸叶 嘉明高崎 芳成
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 32 巻 4 号 p. 256-262

詳細
抄録

  ニューモシスシス肺炎(Pneumocystis pneumonia;以下PCP)を併発した自験20例の膠原病患者の臨床データを解析し,厚生労働省研究班のST合剤の予防投与基準の有用性について検証した.19例(95%)は間質性肺炎(Interstitial Pneumonitis;以下IP)・腎機能障害などの何らかの合併症を保有しており,特にIP・腎臓機能障害を保有する群では死亡率が高かった.血液検査所見では,β-Dグルカン値は全例陽性で,LDH値・KL-6値が高値の症例も認めた.基礎膠原病疾患の治療において,ステロイドパルス療法を含む大量ステロイド使用例は11例(55%),methotrexate(以下MTX)を含む免疫抑制剤使用例は12例(60%)で,19例(95%)がどちらかの治療をしていた.PCPの予後に対するステロイドパルス療法の効果は8例が呼吸不全による死亡に至り,はっきりしなかった.厚生労働省研究班のST合剤の予防投与基準は9例(45%)が満たしたが,年齢の項目を除くと,15例(75%)の症例が該当していた.基準を満たさない症例では,IPの合併,MTX・生物学的製剤の投与,アルブミン値低下などの基準にない危険因子を認めた.予防基準施行後は,PCPの発症が激減していることから,本基準の成果は期待できるが,基準より外れてPCPを発症する可能性があることが,課題として残された.

著者関連情報
© 2009 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top