日本臨床免疫学会会誌
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総説
カルシニューリン・NFAT系とその阻害薬
天崎 吉晴
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2010 年 33 巻 5 号 p. 249-261

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抄録

  免疫抑制剤シクロスポリンAとタクロリムスは臓器移植においてその利用が始まり,近年はリウマチ性疾患の治療にも使用され,優れた成績を上げている.これらの薬剤は脱リン酸化酵素カルシニューリン(CN)を標的としてその活性を抑制し,T細胞抗原受容体の刺激などによって惹起される細胞内カルシウム依存性シグナルを阻害することで,転写因子nuclear factor of activated T cells (NFAT)の核内移行を抑制する.CN-NFAT系は末梢ヘルパーT細胞のサイトカイン産生のみならず,他の免疫応答分子や制御性T細胞,NKT細胞などの様々な免疫系細胞の機能や分化,および免疫系以外の生命現象に関与している.CN阻害剤の投与はT細胞の機能抑制を及ぼすとともに,固有の機序による免疫系以外への影響をきたし,副作用の原因となる.それらの解明と理解はCN阻害薬のCNの適正・安全な使用のみならず,新たな免疫抑制剤の開発にも資すると考えられる.CN-NFAT系の機能に関する近年の知見と,現行および新たなCN阻害薬の可能性につき概観する.

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© 2010 日本臨床免疫学会
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