日本臨床免疫学会会誌
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総説
リウマチ性疾患におけるPI3キナーゼに関する最近の知見
田村 直人
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2012 年 35 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

  リウマチ性疾患は全身性の慢性炎症性疾患であり,多くの疾患で自己免疫異常がみられる.ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(phosphoinositide 3-kinase : PI3K)は細胞の増殖や生存をはじめ様々な細胞機能に関与するが,PI3Kは免疫担当細胞においても重要な役割を示す.PI3K/Akt経路はT細胞やB細胞の活性化や増殖,制御性T細胞誘導などに関与する.SLEでは患者B細胞およびT細胞におけるPI3K/Akt経路の活性化がみられ,またループスモデルマウスではPI3K阻害薬が腎症を軽減させることなどから,病態への関与が示唆されている.また,関節リウマチ患者滑膜においてもPI3K活性化がみられるが,我々はコラーゲン誘発性関節炎マウスにPI3K特異的阻害薬ZSTK474を投与すると関節炎が抑制されることを報告した.ZSTK474はin vitroでリンパ球や滑膜細胞増殖を抑制し,さらにin vitroおよびin vivoにおける破骨細胞形成を阻害した.PI3Kは様々なリウマチ性疾患の慢性炎症や自己免疫異常の病態形成に関わっており,その阻害薬の今後の治療への可能性が期待される.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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