日本臨床免疫学会会誌
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特集:慢性炎症と自己免疫疾患
慢性炎症疾患病態形成と病原性CD4 T細胞
熊谷 仁平原 潔中山 俊憲
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2016 年 39 巻 2 号 p. 114-123

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抄録

  CD4 T細胞は宿主防御の適切な適応免疫応答に重要である一方,多くの慢性炎症疾患の病態形成に深く関与している.CD4 T細胞は,1980年代に同定されたTヘルパー(Th)1細胞とTh2細胞に加え,近年では,Th17やTh9,濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞,制御性T(Treg)細胞など多様なサブセットからなっている.また,ひとつのサブセットの中でも様々な性質を持つT細胞が存在すること(T細胞の多様性)や,ヘルパーT細胞は一度分化した後も周囲の環境で容易にその性質が変化すること(ヘルパーT細胞の可塑性(plasticity))が明らかになった.本総説では,CD4 T細胞サブセットの多様性および可塑性が,どのように免疫関連慢性炎症性疾患に関与しているのかについて,多発性硬化症や乾癬,気管支喘息などを例にあげて概説する.また,近年明らかになってきたCD4 T細胞可塑性の背景にある分子メカニズムについて述べる.近年のCD4 T細胞研究の進歩により,かつて提唱された“Th1/Th2バランス破綻”に基づいた免疫関連慢性炎症性疾患の病態形成モデルは再考が必要である.そこで,われわれが近年提唱した免疫関連慢性炎症性疾患の病態形成における“病原性Th細胞疾患誘導モデル”を最後に紹介する.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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