2002 年 64 巻 5 号 p. 612-620
アトピー性皮膚炎患者の皮膚角層では,角質細胞間脂質,特にセラミドの減少によるバリア機能および保湿機能の低下があり,皮膚の易刺激性の原因をなし,アトピー性皮膚炎の再発難治性の要因と考えられている。このため,皮膚の洗浄に際しては,洗浄剤によるこれら皮膚角層機能障害の悪化を最小限に抑えることが望ましい。一方,セラミドの皮膚塗布は,これらの角層機能異常を改善することが知られているので,本研究では,洗浄剤に合成擬似セラミドを配合することにより,アトピー性皮膚炎および乾燥性湿疹患者の皮疹への臨床効果を検討した。使用試験では,アトピー性皮膚炎患者15例および乾燥性湿疹患者6例にアルキルエーテルカルボキシレートを低刺激性洗浄基剤とし,そこに合成擬似セラミドを1%均一分散配合した身体洗浄剤を,治療用薬剤との併用にて使用し,これら疾患に対する治療補助効果を検討した。その結果,「乾燥」「落屑」「掻破痕」「紅斑」等の皮膚所見においては,有意な改善が認められ,角層水分量(スキンコンダクタンス)は,試験開始前の値と比較し有意に増加した。総合効果判定においては,52.4%に有用性を認めた。以上より,合成擬似セラミド均一分散配合身体洗浄剤は,アトピー性皮膚炎および乾燥性湿疹患者の乾燥皮膚に対し,治療補助効果を有し,症状の改善に有用であると考えられた。