日本血栓止血学会誌
Online ISSN : 1880-8808
Print ISSN : 0915-7441
ISSN-L : 0915-7441
原 著
わが国における後天性凝固因子インヒビターの実態に関する3年間の継続調査
─予後因子に関する検討─
田中 一郎天野 景裕瀧 正志岡 敏明酒井 道生白幡 聡高田 昇高松 純樹竹谷 英之花房 秀次日笠 聡福武 勝幸藤井 輝久松下 正三間屋 純一吉岡 章嶋 緑倫
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 19 巻 1 号 p. 140-153

詳細
抄録

わが国における後天性凝固因子インヒビター患者の実態を把握する目的で3年間にわたるアンケート調査を行った.42施設から56例が登録されたが,うち55例が後天性血友病Aであり,その年齢分布は12-85(中央値70)歳であった.基礎疾患は自己免疫疾患と悪性腫瘍がそれぞれ17%を占め,出血症状は皮下出血や筋肉内出血の他,全経過中に重篤な出血が11%にみられた.インヒビターの最高値は1.1-758(中央値29.5)Bethesda 単位/mlであり,診断時に第VIII因子活性が同時に検出されたものが54%を占めた.止血療法はバイパス製剤の使用が多く,免疫抑制療法はプレドニゾロンの単独または他の免疫抑制剤との併用が多かった.経過を追跡しえた40例中21例でインヒビターが消失したが,9例は寛解に至らず,10例は死亡した.予後に影響を及ぼす因子として,止血療法,免疫抑制療法に対する反応性ならびに,経過中の感染症合併の有無で有意差がみられ,本症の治療に際しては,止血管理とともに感染症のコントロールが重要と思われた.

著者関連情報
© 2008 日本血栓止血学会
前の記事 次の記事
feedback
Top