2007 年 48 巻 2 号 p. 65-70
症例は45歳,男性.平成12年より非代償性アルコール性肝硬変と食道静脈瘤の加療のため入退院を繰り返していた.約3カ月間通院を自己中断し平成17年3月6日呼吸苦を主訴に救急外来を受診.腹水に加え右側大量胸水を認め,かつ呼吸不全を伴っていたためチェストチューブを挿入した.胸水中の多核白血球が増加しており,肝硬変に合併した特発性細菌性胸膜炎(spontaneous bacterial empyema; SBEM)と診断した.抗生剤投与にて胸水の性状は非感染性となったが,排液量は減少せずチェストチューブの抜去が困難であった.胸水排液による蛋白喪失も難治の一因と判断し,OK-432による胸膜癒着術を2回施行した.その後排液量の減少が得られ,チェストチューブの抜去が可能となった.また癒着術後腹水の増加や肝不全の悪化は認めず,最終的には腹水の消失も得られた.特発性細菌性胸膜炎後の難治性肝性胸水に対して胸膜癒着術を施行した報告はなく,示唆に富む症例と考え報告する.