2012 年 53 巻 10 号 p. 615-623
症例は68歳女性.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)として外来通院中であったが,腹部MRI検査で多発肝腫瘍を認め,精査加療目的にて入院となった.腫瘍はS3に22 mmの結節性病変を,またS1とS4およびS6にも小結節性病変を認めた.切除標本においてS3病変は境界明瞭で被膜形成のない白色充実性腫瘍で,免疫染色ではCK7,CK19,EMA陽性,HepPar1陰性であり細胆管細胞癌の所見であった.一方S4の病変はdysplastic noduleであった.S1およびS6病変は画像検査上肝細胞癌の診断にてRFAを施行された.NASHを背景肝として発症した細胆管細胞癌と肝細胞癌の合併は稀であり文献的考察を加えて報告する.