2015 年 30 巻 4 号 p. 607-613
症例は65歳の男性で,食欲低下,発熱を主訴に当院を受診した.入院時の血液検査では白血球数およびG-CSF値が上昇しており,腹部造影CT検査では膵尾部の腫瘍性病変と大動脈周囲リンパ節の腫大を指摘された.G-CSFを産生する特殊な膵癌を疑い,治療方針決定のために開腹して大動脈周囲リンパ節生検を行う方針とした.術中迅速病理検査でリンパ節転移はみられなかったために膵体尾部切除術,脾臓摘出術,胃部分合併切除術を施行した.腫瘍は組織学的に退形成膵癌であり,免疫組織化学染色でG-CSFが陽性を示した.術後白血球数およびG-CSF値は低下したが,早期に肝転移,腹腔内リンパ節転移再発がみられた.S-1, Gemcitabineによる化学療法を行ったが,術後116日目に永眠した.病理解剖では腫瘍は退形成膵癌の局所再発と広範な他臓器転移を認めた.G-CSF産生膵癌は稀で貴重な症例と考え報告する.