2008 年 23 巻 5 号 p. 608-614
症例は66歳男性,閉塞性黄疸で発症したAutoimmune pancreatitis(AIP)が,1年6ヶ月のステロイド維持療法後,3年後に閉塞性黄疸で再発した.ステロイド再投与後,AIPは改善したが,その6ヶ月後,脳内出血で再入院した.7ヶ月後CA19-9 364U/mlと急上昇し,PET/CTで膵尾部癌,多発肝転移,骨盤転移と診断された.画像診断で膵炎所見は改善し,血清IgG4値も330から30mg/dlに改善した.抗癌剤投与が行われたが無効であった.最近,AIPの膵癌併発例が散見されるようになった.これまでAIPは予後良好の膵炎と認識されてきたが,今後は,膵炎症状の消退後も癌の存在を常に念頭に起き,ステロイドの長期投与の併発症に注意しながら,厳重に長期観察を行うことが肝要と考えられた.