2011 年 25 巻 4 号 p. 460-464
症例は62歳女性.右乳癌術前精査中に胸部CTにて左S1+2に28×26mm大の腫瘤陰影を認めた.気管支鏡検査を施行したところ左B1+2と考えられる気管支が左主気管支より直接分岐する分岐異常を認め,同気管支より生検を施行し腺癌と診断した.左原発性肺癌(cT1bN0M0)と診断し左上葉切除,リンパ節郭清を施行した.術中,肺動脈の背側を左上葉に進入する索状物を認めた.上下葉間は不全分葉で上区とS6間を形成する際に前述の索状物を肺組織とともに自動縫合器にて切離したところ,索状物が左B1+2であったことが判明した.左B1+2が左主気管支から直接分岐し肺動脈の背側を走行する解剖学的特徴が認められた.気管支分岐異常の頻度は0.4~0.6%であり,左B1+2分岐異常の発生頻度は全気管支分岐異常の0.02~0.2%と稀である.左B1+2分岐異常では気管支が肺動脈の背側を走行する場合があることを念頭に置く必要がある.