日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
60歳以上の高齢者急性リンパ性白血病の臨床的検討
名倉 英一南 三郎永田 紘一郎森下 剛久竹山 英夫佐尾 浩鈴木 久三直江 知樹横幕 省三水野 晴光村瀬 卓平平林 憲之城川 容子谷本 光音川島 康平斎藤 英彦
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1999 年 36 巻 1 号 p. 52-58

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抄録

頻度が少ない高齢者の急性リンパ性白血病 (以下ALLと略す) の病態と治療の現状および問題点を検討するため, 1990~95年に名古屋地区12施設で経験した60歳以上のALL20例を調査解析した. 症例の年齢分布は60歳台12例, 70歳台4例, 80歳台4例 (中央値67歳) で, 男性12例女性8例であった. 表面抗原は検索例17例中, B細胞系13例, T細胞系2例, 幹細胞系1例, 判定不能1例と76%がB細胞系であり, 染色体は結果が判断できた15例中, Ph染色体を4例 (27%, うち3例はその他の異常も認めた), その他の異常6例で, 正常染色体の症例は5例 (33%) であった. また, 10例に診断時に合併症を認め, うち2例は治療に影響を与えた.
治療は全例に施行され, 寛解導入療法は, vincristine (以下VCRと略す) +Adriamycin (以下ADMと略す) +cyclophosphamide+mitoxantrone+L-asparaginase+prednisolone (以下PSLと略す) 4例, ADM+VCR+PSL 4例, VCR+PSL 4例, その他8例であった. 全体の寛解率55%で, 年代別では, 60歳台58%, 70歳台50%, 80歳台50%であった. 生存期間中央値は, 全体では205日で, 60~74歳 (15例) は276日と75~88歳 (5例) の121日より延長傾向を認めた (generalized Wilcoxon test, p=0.307). 主治医が判定した治療の強さは強力治療3例, 標準治療6例, 減量治療9例であったが, 減量治療の割合は年代が上がるにつれて有意に増加し (p<0.01), 75歳以上の症例はすべて減量治療であった.
以上の結果, 高齢者ALLではB細胞系とL2の割合が増加し, 診断時に合併症が多く, 予後は非高齢成人に比べ不良であり, とりわけ, 75歳以上の高齢者ALLは強力な治療の遂行が困難であった.

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