日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者の日常生活内容と身体機能に関する研究
島田 裕之内山 靖加倉井 周一
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2002 年 39 巻 2 号 p. 197-203

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抄録

本研究では通所にてリハビリテーションを利用している高齢者において, 屋外活動範囲の違いが筋力, バランス, 歩行機能といった運動機能に及ぼす影響を検討するとともに, 屋外活動の遂行に関連する身体機能を明らかにすることを目的とした. さらに, 施設入所者を加え身体活動とともに, 知的, 社会的活動が身体諸機能に及ぼす影響を検討した. 対象は施設を利用する高齢者265名 (平均年齢80.3±7.0歳) であった. 屋外活動範囲の聴取によって屋内活動, 近隣のみの屋外活動, 遠方までの屋外活動を行う群に通所者を分類し, これらの群間で身体機能の差を調べた. その結果, Barthel Index, 片脚立ち保持時間, Timed Up and Go Test, Performance-Oriented Mobility Assessment において有意差が認められ, 広範囲に活動している者ほど高い身体機能を保持していた. また, 近隣での屋外活動を行うためには Barthel Index が95点以上, バスなどの公共交通機関を利用して遠方まで活動するには Timed Up and Go Test が18秒以内, Performance-Oriented Mobility Assessment が26点以上であれば概ね遂行可能であると考えられた. 身体活動や知的活動の遂行別に身体機能を比較すると, 入所者, 通所者ともに運動習慣や家事などの身体活動を行っている者が高い身体機能を示した. 以上から, 活動範囲の拡大や積極的な身体活動を遂行している高齢者は, 良好な身体機能を有しており, 適切な活動の遂行が機能低下の予防に関連するものと考えられた.

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