本研究は, 2003年10月に福岡県遠賀郡のM町の唯一の訪問看護ステーションの利用者 (要介護高齢者とその家族介護者) 44名中, 有効回答を得られた40人を対象に, 日本語版 Zarit 介護負担尺度 (J-ZBI) を用いて, 介護負担に関する調査を行った. J-ZBIの得点を3分位に分け得点の高い順に高負担群, 中負担群, 低負担群, と定義した. また, 本調査までのJ-ZBI, CES-D, 抑うつの割合, 寝たきりの割合, 痴呆の割合やサービスの利用を, 介護保険導入前と経時的に比較検討した.
高負担群は中負担群, 低負担群に比べてJ-ZBI, CES-Dが高かった. 高負担群は低負担群に比べて健康状態の悪いと答えた者, 経済的ゆとりの無い者の割合が高く, 介護時間が長かった. 高負担群は中負担群に比べてショートステイの利用が多かった.
介護保険導入前と導入後の調査を経時的に比較検討した結果, 導入前と比べJ-ZBIは3年目には低下する傾向を認め, 4年目には有意に低下した. 統計学的有意差は認めなかったものの, 抑うつの割合は導入前の56.3%から4年目の37.5%に低下した. 寝たきりの割合は4年目に有意に低下した. デイケア・デイサービスの利用者の割合は3年目, 4年目には有意に低下していた. 介護保険導入により4年目にはJ-ZBIは有意に低下し, 介護者の抑うつの割合も低下傾向を示したが, 一般人の抑うつの割合と比べるとはるかに高く, 介護者に対する支援をもっと行う必要があると考えられた.