日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー尺度の開発
稲葉 康子大渕 修一岡 浩一朗新井 武志長澤 弘柴 喜崇小島 基永
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2006 年 43 巻 6 号 p. 761-768

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抄録

目的: 介護予防事業の対象となる虚弱高齢者のための身体活動セルフ・エフィカシー (身体活動SE) 尺度はない. そこで本研究は, 1) 虚弱高齢者向け身体活動SE尺度を作成し評価する, 2) その尺度で虚弱高齢者の身体活動SEを評価し, 年齢, 性別, 活動能力との関係を調査することを目的とした. 方法: 対象は地域在住高齢者187例であった. 身体活動SEは,「歩行」,「階段昇り」,「重量物挙上」の3項目の加構成とした. 対象者の内100例に対し身体活動SEの再検査を行った. 身体活動SE, 身体機能 (通常歩行速度, 最大歩行速度, 膝伸展筋力, 握力), 老研式活動能力指標 (老研式) を評価し, 検査・再検査法, α係数にて信頼性, 外的基準としての身体機能との相関分析, 因子分析により妥当性を検証した. 前期・後期高齢者の年代層別, 性別による身体活動SEの相違, 老研式の下位尺度について単相関係数を求めた. 結果: 検査・再検査による相関係数と,α係数は, 歩行 (r=.72, P<.01,α=.82), 階段昇り (r=80, P<.01,α=.90), 重量物挙上 (r=.60, P<.01,α=.78) であり, 信頼性が確認された. 身体機能と身体活動SEは, 全ての項目で有意 (P<.01) な相関を得た. また因子分析では3因子が抽出された. 年齢層別の比較において,「重量物挙上」のみ前期高齢者が有意 (P<.05) に高く, 性別の比較では, 全ての項目で男性が有意 (P<.01~.05) に高値であった. また老研式との関係では,「歩行」項目と「手段的自立」「知的能動性」「社会的役割」,「階段昇り」項目と「手段的自立」「知的能動性」に有意 (P<.01~.05) な相関が認められた. 結論: 虚弱高齢者の身体活動SE尺度の有用性が示唆された. 今後, 虚弱高齢者に対する身体機能やQOL改善のための方策を考える際に身体活動SEを導入し, 身体機能, QOLの改善との関係について検討する必要がある.

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