日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
活力度指標の信頼性,妥当性および,活力度指標と加齢,運動との関連性に関する検討
神崎 恒一村田 久菊地 令子杉山 陽一長谷川 浩井形 昭弘鳥羽 研二
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キーワード: 活力度, 加齢, 運動, QOL
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2008 年 45 巻 2 号 p. 188-195

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抄録

目的:地域高齢者のQOLに対する運動の効果を検討するため,我々は日常生活の活力度を評価する指標(活力度指標)を作成し,加齢及び運動との関連性を検討した.方法:Lawtonの階段型評価をもとに36項目からなるVS原案を作成し,全国の体操三井島システム会員4,701名と,東京都住民579名の計5,280名を対象に調査を行い,因子分析,信頼性の検討を行った.VSと加齢及び運動との関連性については各下位尺度と加齢,運動との相関係数及び活力度指標を従属変数とし加齢,運動を独立変数とする分散分析によって検討した.結果:活力度指標原案の質問36項目について因子分析を行った結果,因子数4, 20項目を活力度指標(ASE)として設定した.5,280名の対象者のASEの平均値は27.18±5.28であり,男女に有意差はなかった.4因子構造を確認するための確認的因子分析では適合度指標において十分な値(GFI=0.91 AGFI=0.88 RMSEA=0.04)が得られ,因子の安定性が示された.また,各下位尺度におけるα係数の算出では一定の内的一貫性が認められた.ASEと年齢,運動との関連性の検討では,ASE得点の差が運動群―非運動群間,年代間で有意であった(p<0.01).2要因分散分析の結果,運動と年齢で有意な交互作用(p<0.01)がみられ,非運動群ではASE得点が60歳代26.3から70歳代23.9と下降したが,運動群では下降は見られなかった.また,50歳代から80歳代の各年代において,運動群の方が非運動群よりも有意(p<0.01)にASE得点が高かった.結論:地域高齢者のQOL評価のために,下位尺度の内的一貫性と安定性をもつ活力度指標は有用であり,運動は加齢による活力度低下を防ぐ効果をもつことが期待される.

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© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
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