日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
炎症性疾患に続発した高齢者偽痛風症例の検討
小原 聡将長谷川 浩船曳 茜井上 慎一郎杉山 小百合宮城島 慶八反丸 美喜子里村 元竹下 実希松井 敏史神﨑 恒一
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 51 巻 6 号 p. 554-559

詳細
抄録

目的:偽痛風は高齢者における発熱の原因疾患として重要であり,炎症性疾患の経過中,また治療後に発症することをしばしば経験する.しかし偽痛風発作の惹起機序など未だ不明な点が多い.杏林大学医学部付属病院高齢診療科に入院した偽痛風患者を詳細に評価検討した結果について報告する.方法:2009年1月から2012年12月の4年間に当科に入院した患者のうち,偽痛風と診断した14名について検討し,さらに偽痛風発症前に炎症性疾患を認めた7例についてさらに詳細に検討した.結果:今回の検討において,罹患関節は14例中12例が膝関節であり,2関節以上に症状が出現した症例が4例認められた.X線所見では14例中9例で明らかな関節軟骨石灰化が認められた.関節穿刺を施行した2症例においてCPPD結晶が検出された.治療は,全例でNSAIDsを使用した.14例のうち7例は先行する炎症性疾患を有し,これは全例で感染症であった.この7例中5例で体温,炎症反応の再上昇を認め,2峰性の経過を認めた.平均抗菌薬使用日数は11日,そのうち2例は菌交代と判断され抗菌薬を変更した.関節症状が出現するまで長期間であった3例は,平均抗菌薬使用日数も長期に渡り,複数の抗菌薬を使用した.結論:高齢者偽痛風患者の中には遷延する感染症や不明熱として判断されている症例が存在する.高齢者は関節症状をすでに有していることも多く,特に認知症などで訴えが明確でない場合は一層見逃されやすくなると考える.高齢者の発熱の鑑別診断として偽痛風を念頭に置き,診療を行うことは極めて重要である.

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top