日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
反復唾液嚥下テストにおける舌骨上筋群触診併用の有用性について
―若年健常者における検討―
池野 雅裕熊倉 勇美矢野 実郎
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2011 年 15 巻 2 号 p. 149-155

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抄録

嚥下障害のスクリーニングテストには,反復唾液嚥下テスト(以下,RSST)などの方法がある.RSST は感度が高く,リスクが少ないので広く臨床に普及している.しかし,頸部皮下脂肪が厚い,甲状軟骨の位置が高いなどのために喉頭挙上の確認ができず,検査の実施が困難な場合がある.本研究では,嚥下反射惹起時には舌骨下筋群ばかりでなく舌骨上筋群にも運動がみられることに着目し,甲状軟骨触診と下顎下面触診を併用することで,嚥下反射の検出率を向上させることができないかと考えた.仮説の検証には,表面筋電図と嚥下音の同時測定のほか,ビデオ嚥下造影(以下,VF)を使用し分析・検討を加えた.

方法は,1)健常成人4 名に表面筋電図,嚥下音,VF,下顎下面触診の同時計測,2)健常成人20 名に表面筋電図,甲状軟骨触診,下顎下面触診および嚥下音の同時計測を行った.触診については,嚥下反射があったと思われる際に,検者が筋電図上にマークを付した.筋活動量は,絶対値処理後,積分法により算出した.また,表面筋電図の導出筋は舌骨上筋群,舌骨下筋群とした.その結果,1)嚥下音聴取と触診における嚥下反射惹起のマークを比較したところ,甲状軟骨触診のみで58%,甲状軟骨触診と下顎下面触診の併用で95% であり,有意に高くなった.また,未遂時と惹起時の舌骨上筋群筋活動量は,惹起時が有意に増加していた.2)VF により,喉頭が挙上し,喉頭蓋の反転がみられる(嚥下反射惹起)ほかに,嚥下躊躇と思われる喉頭の上下運動(嚥下反射未遂)が観察された.以上のことから,甲状軟骨触診のみで嚥下反射の確認が困難な対象者に対し,下顎下面触診を併用することで,RSST の精度が向上すると考えられた.

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© 2011 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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