日本医真菌学会雑誌
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マラセチア抗原からみたアトピー性皮膚炎
川口 博史秋山 一男
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キーワード: 真菌, 皮膚テスト, カンジダ
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2003 年 44 巻 2 号 p. 65-69

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抄録

アトピー性皮膚炎(AD)患者においてヒトにおける常在真菌であるマラセチアについて検討した.AD患者の約半数はマラセチア特異IgE抗体を有し,重症例ほど有意に高い抗体価であった.マラセチアの精製抗原としてmanganese superoxide dismutase (MnSOD), cyclophilin, Malf2に対するIgEを測定すると各成分に対する抗体が検出されたが,陽性率,抗体価は症例間で一定の傾向はなかった.In vivoでの皮内テストの結果を皮膚炎のない喘息患者のそれと比較するとAD群ではマラセチアに対する遅延型反応陽性率が喘息群に比べて高いのが特徴的であった.またin vitroで末梢血液単核球をマラセチアと培養し,IL-5産生をみたところ陽性例が存在し,特に顔面に皮疹を有する例に有意に産生がみられた.前額,胸部,上背部からマラセチアの検出を試みたところ,検出率は42-71%でいずれの部位も無疹部からの方が菌数が多く認められ,皮疹部からは検出率,菌数ともに低かった.
マラセチアは皮表に常在し,特にAD患者においてはマラセチアに対する反応を明らかに有する例が存在したことから,マラセチアがADにおける抗原のひとつであることが示唆された.しかしながらマラセチアのメジャーアレルゲンはまだ決定されておらず,また誰にでも存在する常在菌がどのようにADの病因として関わっているのかなど,さらなる研究が必要である.

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