日本臨床外科学会雑誌
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骨盤内臓全摘術を要した転移性痔瘻癌の1例
八木橋 信夫大澤 忠治成田 淳一岩渕 圭柘植 俊夫
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2002 年 63 巻 9 号 p. 2224-2228

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抄録

症例は50歳の男性であり,生来健康で痔瘻の既往もなかったが,肛門から直腸周囲にかけての膿瘍とS状結腸癌(中分化型腺癌)との診断を受け,まず膿瘍切開術とS状結腸切除術を施行した.しかし痔瘻の回復が遷延し, 5ヵ月後の痔瘻手術の際の組織診で高分化型腺癌の診断を受けた.痔瘻先端は前立腺後方まで及んでおり,遠隔転移や周囲リンパ節腫脹を認めなかったため骨盤内臓全摘術を行った.自験例は両者の組織型が非常に似ていること,所謂痔瘻癌に特徴的な粘液産生をほとんど認めなかったことなどよりS状結腸癌よりの管腔性のimplantationによる転移性痔瘻癌と診断した.本症報告例は猟渉しえた限りでは,現在まで7例で自験例が8例目にあたる.結腸および直腸癌に痔瘻が合併する場合,痔瘻癌の有無を診断しておくことが重要で,さらに痔瘻癌に遭遇した際には結腸癌の除外診断は必須であると思われた.

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