2003 年 64 巻 6 号 p. 1358-1361
症例は68歳,男性. 2000年8月肝S8の肝細胞癌に対し肝部分切除を行った. 1年後肝内に再発したので肝動注化学療法を4クール, TAEを3回行った. 2001年12月夕食後,突然胸痛が出現し当科受診.血胸と診断され胸腔ドレナージを行った.血胸の原因検索をしたところ,肝細胞癌の縦隔リンパ節転移巣が破裂し血胸をきたしたと思われた.ドレナージ後も出血が続くため止血,腫瘍縮小効果を期待し左横隔膜下動脈にTAEを行った. TAE 2週間後よりAFPの上昇,腫瘍の急速な増大をみたので再破裂の危険性を考慮し, 2002年2月腫瘍摘出術を行った.腫瘍は縦隔内にあり,一部下大静脈と癒着していたが直接浸潤はなかった.組織学的に前回の肝癌と一致した.術後は14日目よりCDDP/MMC (胸腔内), CPT-11 (全身), UFT内服などの化学療法を行った. AFPは順調に下降し術後60日目に退院した.退院後は化学療法を継続し術12カ月後の現在,再発徴候もなく健在で外来にて経過観察中である.