2008 年 69 巻 8 号 p. 2078-2082
症例は57歳,男性.B型慢性肝炎による肝機能障害にて当院通院中であった.平成16年10月,突然の腹痛が出現し近医を受診.腹部CTにて腹腔内の血腫と肝に腫瘍性病変を認め当院に緊急入院となった.入院時の腹部CTではSpiegel葉に4.5cm×4.0cm大,S8に2.5cm大の早期濃染と網嚢内に充満する血腫を認めた.腹部血管造影では明らかなextravasationは認めなかったが,血腫の局在からSpiegel葉原発肝癌の破裂と診断しTAEを施行した.TAE後2カ月目にSpiegel葉切除,S8部分切除を施行した.病理組織学的にSpiegel葉の腫瘍は広範な壊死と凝血塊を伴う中分化型肝細胞癌と診断された.術後16カ月目に残肝多発再発,多発肺転移,傍大動脈リンパ節転移のため死亡した.本邦報告例13例の集計から網嚢内血腫はSpiegel葉を原発とする肝細胞癌の破裂に特徴的な画像所見と考えられた.