2008 年 69 巻 1 号 p. 47-51
症例は66歳,男性.平成13年1月に胸部下部食道癌にて食道亜全摘・胸骨後再建による頸部食道胃管吻合術を施行した.平成18年1月初旬より全身倦怠感が出現し精査の結果心嚢液の貯留が認められ精査加療目的で当院外科入院となった.入院後の内視鏡検査および造影検査の結果,胃管潰瘍が心嚢へ穿通したと診断し,絶食および抗潰瘍薬投与による保存的治療を開始した.心嚢液貯留による心タンポナーデや心嚢炎に対しては経皮的心嚢ドレナージで心不全や感染コントロールを行った.ドレナージにより心機能は保たれ,感染コントロールも良好で入院から約1カ月後瘻孔の閉鎖を確認したのち経口摂取を開始した.近年食道癌に対する治療法の進歩により長期生存例が増え,それに伴い再建胃管潰瘍の報告も散見されるようになってきた.しかし心嚢へ穿通し保存的に軽快した症例は比較的稀であるため文献的考察を加えて報告する.