日本臨床外科学会雑誌
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症例
短期間に増大し術前診断に苦慮した後腹膜海綿状血管腫の1例
武田 真小柳 和夫中川 基人金井 歳雄松本 圭五亀山 香織
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2009 年 70 巻 5 号 p. 1541-1545

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抄録

症例は59歳,男性.持続する左側腹部痛を主訴に受診,左側腹部に手拳大の腫瘤を触知した.画像検査で腹部大動脈左側,十二指腸水平脚尾側に位置する後腹膜腫瘍を指摘された.CT検査での造影効果は乏しく,血管造影でも腫瘍濃染像は認められなかった.質的診断には至らなかったが,症状の増悪,腫瘍の急速な増大,後腹膜腫瘍の悪性頻度を考慮して切除術を施行した.開腹所見で腫瘍は下腸間膜動静脈背側の後腹膜を主座とし,S状結腸間膜へ進展しており結腸間膜を含め腫瘍を完全に摘出した.病理組織学検査で海綿状血管腫と診断された.後腹膜の海綿状血管腫は大半の海綿状血管腫と異なる乏血性を反映した画像所見を呈することがある.本腫瘍は頻度の低さから術前診断がしばしば困難で本邦報告13例中,術前診断されたものは1例のみである.本症例の経験から血流に乏しい後腹膜腫瘍の鑑別診断に海綿状血管腫も考慮すべきと考えられた.

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© 2009 日本臨床外科学会
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