2015 年 76 巻 1 号 p. 1-5
急性虫垂炎は急性腹症の中で発生頻度の最も高い疾患である.急性虫垂炎は早期手術が治療の原則であるが,すべての症例が速やかな緊急手術の対象となるわけではない.今回,緊急手術が必要とされる穿孔性・壊疽性虫垂炎(以下複雑性虫垂炎)を判別可能にする臨床指標について検討したので報告する.2009年1月から2012年12月までの4年間に,急性虫垂炎の診断で当科で手術を行った172例を対象とした.多変量解析では,虫垂周囲液体貯留(p=0.008,Odd比=3.175),CRP 4.7mg/dl以上(p=0.009,Odd比=3.979),受診時体温37.4℃以上(p=0.045,Odd比=2.400)の3因子が複雑性虫垂炎を術前予測する独立した因子であった.予測因子3因子すべて満たさない症例の97%がカタル性・蜂窩織炎性虫垂炎であり,手術適応であっても夜間の緊急手術は回避できると考えられた.