日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝に発生したchronic expanding hematomaの1例
中尾 圭介伴 大輔落合 高徳工藤 篤田中 真二大西 威一郎小林 大輔田邉 稔
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キーワード: chronic expanding hematoma,
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2015 年 76 巻 1 号 p. 90-95

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抄録

症例は68歳,男性.10年前から6cm大の肝腫瘤を健康診断で指摘され血管腫の疑いとして経過観察されていた.2011年7月,腹部超音波検査で腫瘤に増大傾向を認めたことから腹部CT検査施行し,肝S6に充実成分を有する7.4 cm大の嚢胞性腫瘍を認めた.当科に紹介され,胆管内乳頭状腫瘍などの悪性疾患を否定できないため,同年10月に肝S6部分切除術を施行した.切除標本は肝実質から隆起した腫瘤で,割面は充実性部分と赤褐色の漿液を貯留した蜂巣状の嚢胞成分と一部に出血を認めた.病理組織学的には嚢胞内腔は古いものから比較的新鮮なものまで混在する血腫で,腫瘍性病変は認めず,臨床経過と総合して肝から発生したchronic expanding hematoma(以下CEHと略記)と診断した.CEHは1カ月以上かけ緩徐に増大する血腫に対し提唱された臨床的疾患概念で,検索した限りで肝原発のCEHの報告はない.

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© 2015 日本臨床外科学会
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