日本耳鼻咽喉科学会会報
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超音波断層法による頭頸部癌頸部転移リンパ節の検討術前未治療症例58例について
三上 康和鎌田 信悦川端 一嘉苦瓜 知彦保喜 克文三谷 浩樹別府 武
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2000 年 103 巻 7 号 p. 812-820

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抄録

頸部リンパ節転移における超音波診断の向上を目的に,転移リンパ節における超音波所見の特徴と,当科における超音波診断について検討した.
対象は,1996年10月から1998年10月までの間に当科を受診し,術前治療を行わずに頸部郭清術を行った頭頸部扁平上皮癌症例58例とした.対象となったリンパ節は301個で,そのうち病理組織学的診断で転移陽性とされたリンパ節は139個で,転移陰性リンハ節は16個であった.これらのリンパ節に対してく大きさ,く内部エコー,く辺縁の性状,の三点について診断,検討した.
最も優れた診断基準は厚みであり,7mm以上を転移陽性とした時に正診率が78%で最も高かった.厚み/長径比は,厚みには及ばないものの,診断基準の一つとしては有用であった.リンハ節領域別の検討では,上内深頸リンパ節領域と顎下リンパ節領域では厚み7mm以上,中,下内深頸リンパ節領域では6mm以上を転移陽性とするのが最適であった,内部エコーを5種類に分類し検討したところ,転移陽性リンバ節でけ均一高エコー型と不均一エコー型,転移陰性では偏在高エコー型がそれぞれ特徴的であった.均一低エコー型は両者で認められた.辺縁の性状では,明瞭であったものが,転移リンパ節,転移陰性リンパ節でそれぞれ81%,98%であった。
現在我々は.厚みを中心にリンパ節の形状,内部エコー,原発部位等の基準を総合的に判断し診断している.前述の大きさ等を検討したリンパ節に対してこの診断基準を当てはめると正診率は83%であり,厚みのみを診断基準とした場合より高い正診率が得られた.
厚みを中心に今回判明した診断基準を加え,総合的に判断し診断することが,正診率を上げるために重要であった.

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