2007 年 110 巻 8 号 p. 571-580
〔目的〕早期声門癌における根治照射後の残存あるいは再発例に対しての前側方喉頭垂直部分切除術 (frontolateral partial vertical laryngectomy : FLPVL) の有用性を明確にする.
〔対象と方法〕FLPVLを施行した74例 (根治照射後61例) についての術後を, 喉頭機能の回復および創傷治癒の経過と腫瘍制御の面から検討した. 嚥下機能は経鼻栄養チューブ留置期間, 呼吸機能は気管孔完全閉鎖期間, 発声機能は最大発声時間 (Maximum phonation time : MPT) をもっておのおの評価した. また創傷治癒は, 入院中と退院後での合併症の頻度と内容, 入院期間, 創部完全治癒までの期間で評価した. 腫瘍制御に関しては, 局所術後再発と腫瘍因子, 喉頭保存率, 生存率の項目で評価した. それぞれの項目は, 根治照射 (60GY以上) 後の残存あるいは再発に対しての手術群 (A群 : 61例) と初回手術 (60GY未満) 群 (B群 : 13例) の2群間で, また項目により標準切除の群と拡大切除の群とで比較・検討した.
〔結果〕74例のFLPVLで比較・検討を行い, A群では, B群に比べて退院後の合併症の有意な増加と, 創部完全治癒期間に有意な延長を認めたが, 入院中の合併症, 経鼻栄養チューブ留置期間, 気管孔完全閉鎖期間, 入院期間に差は認めなかった. 拡大切除の群では標準切除の群に比べて気管孔完全閉鎖期間と, 入院期間が有意な延長を認めたが, MPTは有意に良好であった. A群では, 術前の前連合浸潤や, rT2の症例に再発が有意に多かったが, 5年局所制御率は85.0% (SE=0.05), 最終の局所制御率と喉頭保存率は93%, 87%と良好であった. 60GY以上の照射後であっても, FLPVLの術後経過, 治療成績は良好であった.