日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
原著
チタン製インプラントを用いた甲状軟骨形成術Ⅰ型についての検討
松島 康二
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 118 巻 8 号 p. 1027-1036

詳細
抄録

 【目的】組織親和性に優れた金属であるチタンを用いて, 甲状軟骨形成術Ⅰ型専用のインプラントを開発し, その音声改善効果と安全性について検討した.
 【対象と方法】胸部大動脈疾患を原因とする男性左声帯麻痺患者9名に対して披裂軟骨内転術と専用チタンプレートを用いた甲状軟骨形成術Ⅰ型を行い, 術後3カ月時点での音響分析検査, ストロボスコープ所見, MPT, MFR, VHI, 頸部 CT について評価した. 手術は laryngeal mask を用いた全身麻酔下に行い, 全例術中に laryngeal mask を抜去し覚醒させ音声を確認した.
 【結果】術後, 各検査において改善を認め, ストロボスコープでは対称性のある粘膜波動が確認された. 頸部 CT では今回検討を行った全例においてチタンプレートは声帯と平行に留置されており, チタンプレートの破損・変形・脱落・移動は認めなかった.
 【考察】声帯麻痺を治療するに当たり患者本来の音声を再獲得するためには, 麻痺声帯を発声時の生理的状態に近づけなければいけない. そのためには甲状軟骨形成術Ⅰ型により声帯前方の支点と振動体の再形成を行い, 披裂軟骨内転術により声帯後方の支点の再形成と声帯に適度な緊張を与える必要がある. この目的のために開発したチタンプレートを用いた音声改善手術について検討を行い, 生理的な声帯振動とともに良好な音声改善効果が得られることを確認した.

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top