日本透析医学会雑誌
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症例報告
Chronic portal-systemic shunt encephalopathy (CPSE) による高アンモニア血症のために意識障害を反復した1例
上田 美緒小島 智亜里杉浦 秀和大貫 隆子田中 好子藤生 亜由子鈴木 基文三宮 彰仁新田 孝作秋葉 隆
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2007 年 40 巻 5 号 p. 445-450

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抄録

症例は76歳, 女性. 1997年11月糖尿病性腎症による慢性腎不全にて血液透析導入, 腎癌にて右腎摘出. 2000年胃癌にて胃亜全摘の既往あり. 2005年5月頃より目のかすみ, 振戦, 腰痛などの症状出現. また, 透析後半に一過性の意識障害が出現したが, 頭部CTでは異常所見なくTIA (transient ischemic attacks) を疑われていた. 同年6月2日再び意識障害Japan Coma Scale (JCS) I-1~2が出現し精査目的にて入院. 入院後, 透析中にJCS IIIまで意識レベル低下. アンモニア臭, 羽ばたき振戦がみられたため分子鎖アミノ酸製剤 (アミノレバン®) を点滴静注したところ意識レベル改善. 血清アンモニア値は286μg/dLと上昇していた. 血液検査では肝酵素異常を認めなかった. 腹部CTにて胃静脈と左腎静脈のシャントを認め, chronic portal-systemic shunt encephalopathy (CPSE) による高アンモニア血症と診断された. 6月24日バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO : balloon occluded retrograde transvenous obliteration) 施行. アンモニア値130μg/dL台まで低下を認めたが, 胃腎シャントの遮断が不完全であるため引き続き肝不全治療薬, 分枝鎖アミノ酸製剤, ラクツロース経口投与にて経過観察となった. 約2年経過しているが, 保存的治療のみで再発は認めていない.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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