血液透析液に少量含まれる酢酸が多彩な症状をひき起こすことは, 古くから知られている. この酢酸不耐症により, 血液透析後繰り返し発熱をきたしたと考えられた2型糖尿病腎不全の1例を経験したので報告する. 症例は62歳男性. 54歳時に2型糖尿病, 59歳時に慢性腎不全と診断され, 62歳, 尿毒症症状が出現し血液透析導入目的に当科に入院した. 透析導入時より毎回の透析後に全身倦怠感や37~39℃の発熱を認めた. 発熱の原因として, 感染症や悪性腫瘍, 膠原病を示唆する臨床所見は認めなかった. 透析液エンドトキシン濃度は基準範囲内であり, ダイアライザー膜および抗凝固剤を順次変更したが, 改善しなかった. 第40病日, 透析液を酢酸含有液から無酢酸液に変更したところ, 透析後の発熱が改善したため, 発熱の原因として酢酸不耐症が考えられた. 血液透析患者に発熱のみを認める場合においても, 酢酸不耐症を鑑別の一つとして考慮する必要がある.