Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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血管新生における血小板由来増殖因子 (PDGF) の役割
Edouard J. BattegayRegula ThommenRok Humar浅田 眞弘岡 修一
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1996 年 8 巻 42 号 p. 231-251

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抄録

血管新生、すなわち既に存在する微小血管から新たな血管を形成する過程は胚発生や創傷治癒、炎症、心臓や末梢血管の虚血性疾患、心筋梗塞、糖尿病性網膜症、そして癌などにおいて重要な機能を果たしている。血小板由来増殖因子 (PDGF) はこれらの過程のほとんどに関与しており、血管網の発達した結合組織の形成を誘導する。
PDGF-A鎖、-B鎖から成るPDGFのホモあるいはヘテロの二量体と、PDGFレセプターのサブユニット (α型、B型) は、組織の損傷や修復の際には広く発現される。低酸素状態などの血管新生を誘導するような刺激はPDGF-B鎖の発現を促す。PDGFは血管新生を直接制御するような炎症性のあるいは結合組織の細胞を引き寄せ、これによって間接的に血管新生を制御する。また、血管を形成しつつある内皮細胞や微小血管由来の内皮細胞は、β型PDGFレセプターを発現するという特徴ある性質を示し、PDGFはこのような細胞には直接作用する。PDGFを外から投与したり局所的に過剰発現したりすると、血管網の発達した結合組織が形成される。胎盤形成、胚形成、創傷治癒、動脈硬化、癌といった血管新生が関与する過程やその疾患の際には、PDGFとそのレセプターが発現されることからも、血管が形成される際にはPDGFが実際に機能していると考えられる。
このように、PDGF-BBは血管網の発達した結合組織間質の形成を促す。PDGF-BBに応答した新たな血管の形成は、β型レセプターを発現している内皮細胞に対する直接作用によるものもある。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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