日本視能訓練士協会誌
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3歳児健診で視力異常を指摘されなかった弱視症例
宇部 雅子渋谷 政子工藤 利子森 敏郎
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2006 年 35 巻 p. 189-194

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抄録

3歳児健診を受診したにもかかわらず視力異常を指摘されず、後に弱視治療が必要とされた症例につき、3歳児健診をすり抜けてしまった原因を検討した。
対象は平成12年1月~平成15年5月までに、岩手県立一戸病院、同中央病院を受診し、弱視治療を必要とした15例24眼で、年齢分布は4~11歳であった。これらの症例の、初診時年齢、弱視の種類、眼科受診の動機、初診時視力、調節麻痺下屈折度、視力予後につき調査した。その結果、弱視の種類は、屈折異常弱視が9例18眼、不同視弱視が6例6眼であった。学校健診と就学時健診で視力不良を指摘され受診したものが15名中10名であった。初診時裸眼視力は、0.5未満が24眼中17眼(70.8%)で、調節麻痺下の屈折度は中等度から高度の遠視性乱視が最も多く、次に混合乱視が多かった。裸眼視力0.5以上は7眼(29.2%)で、中等度以下の遠視性乱視あるいは混合乱視であった。乱視の種類は、直乱視が24眼中22眼で、乱視度数が-2D以上を有しているものが多かった。視力予後は、15例中13例で矯正1.0以上が得られた。3歳児健診で視力異常を指摘されなかった原因は、屈折異常や弱視の種類より、システム自体の問題と考えられた。他覚的屈折検査の導入や視力検査方法の検討で、3歳児健診を更に有意義なものにする必要があると思われた。

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