臨床神経学
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症例報告
遺伝性痙性対麻痺と診断されていた家族性筋萎縮性側索硬化症の1家系
谷口 雄大法化図 陽一岡田 敬史石橋 正人橋口 昭大松浦 英治髙嶋 博
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2017 年 57 巻 11 号 p. 685-690

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抄録

30年以上にわたり四肢の筋萎縮を呈した44歳男性の筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)4を報告する.患者は10歳代に発症し20歳代に遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia; HSP)と診断された.自覚症状はないものの腓腹神経の軸索障害を認めた.父・叔父もHSPと診断されていた.父は73歳.20歳代に歩行障害を呈し60歳代で下肢の運動機能がほぼ消失し,今回の診察で四肢筋萎縮,温度覚・振動覚・関節位置覚の障害を認めた.遺伝子検査で共にsenataxin(SETX)遺伝子変異(c.8C>T,p.T3I)を認め,ALS4の1家系と判明した.ALS4はHSPと臨床所見が類似している点もあり,遺伝子検査なしにHSPと診断された家系にALS4家系が潜んでいる可能性が考えられた.

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© 2017 日本神経学会
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