2009 年 49 巻 7 号 p. 419-423
症例は69歳の男性である.67歳頃から徐々に進行する歩行障害と聴力障害を自覚した.両下肢の遠位筋優位の筋萎縮,靴下型感覚障害がみとめられ,末梢神経伝導検査にて両下肢の軸索型ニューロパチーを呈していた.MRIでは,両側聴神経腫瘍と脊髄・腸腰筋内などに多発する神経鞘腫がみとめられた.NF2遺伝子のexon2に点変異(T161C:L54P)(heterozygous)がみとめられ,神経線維腫症2型(NF2)と診断した.本症例の脊髄・馬尾の多発腫瘍は,大きさと分布から末梢神経の圧排をおこしたとは考えがたく,多発ニューロパチーの原因として軸索・髄鞘自体の異常が推定された.