症例は36歳女性.全身痙攣にて前医へ入院し,抗けいれん薬に抵抗性の意識消失発作をくりかえし,頭部MRIにて両側前頭葉を中心に広汎なT2延長病変をみとめ当院へ転院した.精査にて血清,髄液中の抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体価の異常高値をみとめ,血漿交換療法にて抗体価の低下とともに臨床症状,画像所見が改善した.抗GAD抗体陽性の神経疾患としてStiff-person症候群や難治性てんかんが知られているが,本症例のように広汎なMRI病変をともなう免疫介在性脳症の報告はきわめてまれである.症候性てんかんをともなう脳症では,広汎なMRI病巣を呈するばあいでも抗GAD抗体の関連をうたがう必要がある.