2012 年 52 巻 9 号 p. 681-684
症例は緊張型頭痛を契機に受診した68歳男性である.約1年の経過の認知症があり,観念運動性失行,不全型Gerstmann症候群(失計算,失書,手指失認)がみられ,MRIで左大脳半球に著明な嚢胞状病変が多発,周囲の一部にFLAIR高信号域がみられ,血管周囲腔の拡大がうたがわれた.MRSで病変部の乳酸増加,MRAで左中大脳動脈と左後大脳動脈に局所の狭窄をともなわない描出低下があり,脳血流ECD-SPECTで左大脳半球の集積低下,脳波で左優位の徐波がみられた.患者の徴候は通常優位側頭頂葉病変を示唆し,左大脳半球に限局した多発性の嚢胞状病変との因果関係がうたがわれた.