2015 年 55 巻 2 号 p. 101-106
症例は66歳の女性である.回転性めまい,難聴で受診し,新規発症の多発性脳梗塞があり,心原性脳塞栓症と考え抗凝固療法を導入した.その後約1年間無症状で経過したが,左不全片麻痺を発症し再度多発性脳梗塞と診断された.左不全片麻痺は徐々に改善したが,失調性歩行,失行症状が出現し亜急性に進行した.血液検査で乳酸脱水素酵素,可溶性インターロイキン2受容体が高値で,悪性リンパ腫をうたがった.ランダム皮膚生検,開頭脳生検を施行し,血管内にB細胞系染色陽性の異型リンパ球の集簇をみとめ,血管内大細胞型B細胞リンパ腫の診断をえた.本疾患は急速に進行し予後不良だが,本症例は経過中約1年間進行が停止し,貴重な症例と考えた.