日本消化器外科学会雑誌
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術後肝転移を来し切除しえた膵solid-pseudopapillary tumorの1例
沖野 秀宣廣吉 元正北浦 良樹鬼塚 幸治庄野 正規品川 裕治島田 和生吉冨 聰一渡辺 次郎武田 成彰
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2006 年 39 巻 3 号 p. 340-346

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抄録

歳の女性で, 膵Solid-pseudopapillary tumor (以下, PSPT) の診断で膵体尾部脾合併切除術を施行後, 2年5か月後に多発肝転移を認め肝前区域切除術, ラジオ波焼灼術を施行した. PSPTは若い女性に好発する予後良好な腫瘍と認識されているが, 肝転移を伴う症例での死亡報告例が集積し必ずしも予後良好な腫瘍とは言いがたい. 本邦における肝転移症例50例を通常のPSPTと比較すると, 平均年齢は約15歳高齢で, 原発巣は膵頭部に少なく, 約15mm腫瘍径が大きかった. 肝転移まで平均6.8年を要し, 転移は多発する傾向にあり, 手術施行群が未施行群に対し生存率が高く, 化学療法は無効であった. したがって, 術後長期のフォローアップが必要で肝転移を認めた場合は積極的に手術を行うべきである. 通常の膵管癌とPSPTは発癌の機序が異なり, これが性差や予後の違いを反映することが近年分子生物学的に徐々に解明されつつある.

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