2017 年 50 巻 8 号 p. 630-638
症例は63歳の男性で,胃癌と胃gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)に対して,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.12か月目の腹部骨盤部CTで,胃空腸吻合部に26 mm大の造影効果の乏しい腫瘤を認めた.6か月後には35 mm大へと増大傾向を認め,胃癌もしくは胃GISTの再発も疑われたことから手術となった.手術は腹腔鏡下に残胃部分切除術およびRoux-en-Y型の再再建を行った.病理組織学的所見では,紡錘形細胞および筋線維芽細胞の増生を認めた.免疫組織化学染色検査では,β-catenin,α-SMA陽性で,デスモイド腫瘍の診断となった.切除後24か月現在,胃癌,胃GIST,デスモイド腫瘍いずれの再発を認めない.腹腔鏡下胃切除術後の吻合部に発生したデスモイド腫瘍に対して,遺残なく安全に腹腔鏡下切除を行った1例を報告した.