日本消化器外科学会雑誌
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肝転移を伴ったα-fetoprotein産生性IIa+IIc型早期胃癌の1例
加藤 真史木下 一夫沢 敏治吉光 外宏米村 豊三輪 晃一宮崎 逸夫松井 裕
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1990 年 23 巻 11 号 p. 2624-2628

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抄録

症例は58歳の男性. 人間ドックで胃癌の診断を受け, 手術目的で来院した. 胃X線・内視鏡検査で胃前庭部後壁のIIa+IIc型早期胃癌と診断した. 血清α-fetoprotein (AFP) が91.3ng/mlと高値を示した以外, 血液生化学検査および腹部エコー, computed tomographyでは異常所見はみられなかった. 第2群リンパ節郭清を伴う胃亜全摘術を施行したが, 肝前区域の表面に径2mmの白色腫瘤を認めたためこれを核出した. 胃癌の組織所見は髄様増殖を示すsmの低分化型腺癌でリンパ節転移はなかったが, 肝の小病巣には転移が認められた. 免疫組織学的検索により原発巣, 肝転移巣ともにAFPの局在が証明された. 術後経過は良好であったがmicrometastasisの可能性が高いとの判断のもとに, UFTの投与を開始しCisplatin, Mitomycin C, Etoposideの肝動注を2クール行った. この化学療法によって, 術後再上昇を示したAFPは下降し正常域となった.

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